ビラの文面
6月市議会で不登校対策について質問があった。不登校児童は年々増加している。学びの多様化学校は文部科学大臣の許可を受けて設置される新しいスタイルの魅力的な学校であり、全国に広がりつつある。不登校児童生徒の実態に配慮して、柔軟なカリキュラムを組むことができるという特色を持つ。授業時間数を減らすこと、始業時間を遅めにすること、学年・学級単位ではなく習熟度別の指導をすることなどが取り入れられ、一人ひとりの教育的ニーズに対応できる。松原市は不登校対策の先進市を目指し、学びの多様化学校設立を実現しよう。
26年6月市議会で松井議員(まつばら未来)、井上議員(まつばら未来)、森田議員(日本共産党)が不登校支援について質問を行った。
市は、不登校児童生徒に居場所を提供するチャレンジルーム、登校できるが教室に入れない児童生徒に居場所を提供する校内支援ルーム、フリースクール等利用支援補助金、不登校児童生徒支援リーフレット作成の事業を行っている。だが未着手の事業がある。
市議会ではこれまで不登校支援について何度も質問が行われてきたが、この未着手事業市にはおそらく一度も触れられていない。それは“学びの多様化学校”である。
学びの多様化学校とは
学びの多様化学校とは、不登校児童生徒の実態に配慮して、特別の教育課程を編成して教育を実施している学校のことである。学習指導要領など従来用いている教育課程にとらわれず、柔軟なカリキュラムを組むことができる。例えば、授業時間数を減らすこと、始業時間を遅めにすること、特色ある教科を新設すること、学年・学級単位ではなく習熟度別の指導をすること、制服や体操服などの指定をしないことなどである。学校教育法施行規則第56条等に基づいて文部科学大臣が指定するもので、一般の小学校、中学校、高等学校等と同じく卒業資格を得ることができる。当初は不登校特例校と呼ばれていたが、2023年8月31日に学びの多様化学校と改称された。
例外的措置とはいえ、柔軟な教育を行う学校を法的に認めることは些か驚きなのだが、裏返してみると、不登校問題がそれほど深刻であると言えよう。
設置数・形態
2026年4月現在で、設置数・設置形態・国公私別は次の通り。
全国で84校設置されている。内訳は小学校17校、中学校62校、高校14校(小中一貫校は小学校・中学校にそれぞれ計上しているので、合計と一致しない)。
形態は本校型32校、分校型12校、分教室型29校、コース指定型11校である。
本校型…独立して設置されるタイプ
分校型…母体となる本校と分離して設置されるタイプ
分教室型…一部の学級のみ学びの多様化学校として指定されるタイプ
コース指定型…高校におけるさまざまなコース
公立59校(内訳は都道府県別4校、市区町村立55校)、私立25校である。
尼崎市の学びの多様化学校
2026年4月、尼崎市立尼崎琴葉(ことは)中学校が開校した。設置形態は本校型で、平屋建ての校舎が新設され、クラスルーム3室以外にサポートエリア・マルチルームなどがある。サポートエリア・マルチルームはリビングルームのような多目的空間である。建物の外観は温かみがあり、内部は開放感がある。内部はまつばらテラスと似た雰囲気である。「こんな学校なら喜んで行きたい」と子どもたちが感じるような作りである。
生徒数は1年生10名、2年生13名、3年生13名、計36名。通学区域は市内全域。年間授業時間数は770時間(標準は1015時間)。登校時間は遅め、下校時間は早め。同学年ベースの授業に加えて、異学年ベースの授業を実施。
入学の条件・基準は、●市内に居住していること。●不登校状態、あるいは不登校傾向であること。●琴葉中学校の教育課程や特徴を理解した上で、本人・保護者ともに入学・転学を希望すること。の3要件を満たすことである。
基本理念…こどもセンタード(子どもを中心にした社会)の視点に立ち、地域や社会、そして未来とのつながりのなか、一人ひとりが最大限のウェルビーイングWell-being(個人や社会のよい状態)の向上を実現できる場所。
学校づくりの視点…①尼崎市全体の学びの多様化を推進するためのフラッグシップ校(※)をめざす。②こどもにもおとなにもそれぞれの安心・安全な居場所づくりをめざす。③こども一人ひとりへの教育的ニーズに対応できる。④多様な職種の職員による支援を行う。⑤こどもの「意思決定」を尊重し、個々に応じたライフデザインを描けるこどもを育てる。
※フラッグシップ…もともとは軍事用語で「旗艦(きかん)」と訳される。ここから派生して、ビジネス業界で主力店や本店、重要なもの、という意味で使われることが多いようだ。「フラッグシップ校」は元の使い方に近く、リーダー校と言い換えられるのではないか。
教育のあり方を変える潜在エネルギー
琴葉中学校の基本理念と学校づくりの視点を読んで気づくのは
「不登校生徒を支援する」という言葉がないことである。「支援」には他者よりも弱い者、あるいは劣っている者を助けるという意味が込められている。登校できる生徒と登校できない生徒を対等に扱っているのである。
視点①は「全体の学びの多様化を推進するためのフラッグシップ校をめざす」とある。「居場所づくり」や「教育的ニーズへの対応」よりも上位に位置付けている。不登校問題を解決するためにとどまらず、他の中学校に対して多様化推進を働きかけることを積極的に宣言していると言えよう。
琴葉中学校以外の多様化学校はそれぞれ理念や視点・目標を掲げていて、同一ではないが、既存の学校の理念等とは異質のものを掲げているという点で共通している。多様化学校は少数だが、今後、増えていくことにより、“普通の”学校のあり方に鋭い問いを投げかけ、日本の教育のあり方を変革するエネルギーを秘めている。
不登校児童生徒の居場所づくりにとどまらず、登校している児童生徒によりよい居場所を提供するためにも、松原市は学びの多様化学校設立を目指すべきである。それは近隣市町村へよい刺激をもたらす。多様化学校は大規模な自治体だけが設立しているのではない。たとえば福島県棚倉町は分教室型ではあるが、多様化学校を運営している。熱意があればできる。