9月市議会で道交法改正について質問が行われた。26年4月から自転車の交通違反に対する青切符交付がスタートする。交通事故全体は減少傾向だが、自転車関連の事故は横ばいという現状が背景にある。対象となる交通違反は113種類にもなる。警察官の指導や警告に従わない場合などに反則金が科される。たとえば「ながらスマホ」12,000円、信号無視6,000円、傘さし運転5,000円など。反則金を取られたくないから仕方なく違反しないのではなく、法改正を機に、他人や自分の安全のために積極的にルールを順守していただきたい。
2025年9月24日の福祉文教委員会で植松議員(日本共産党)が「道路交通法改正に伴う学校での安全教育等について」質問を行った。道交法改正とは、26年4月1日から運用が始まる、自転車の交通違反に青切符を交付する新制度のことである。対象は16歳以上であるが、中学3年生であれば間もなく対象となるし、法改正の有無にかかわらず交通安全教育は必要なため、質問が行われたと思われる。ここでは児童生徒に限らず、市民全般向けに法改正について述べたい。
新制度を導入する背景には、交通事故件数が全体として減る一方で、自転車関連の事故件数は横ばいだという現実がある。自転車の交通違反に対しては、これまでは赤切符で検挙していた。この方法では手続きが煩雑で、時間と労力を要する。そのため、悪質な事案以外は注意するだけにとどまっていた。新制度は自動車への青切符交付と同じで、反則金を納付すれば刑事手続きに移行しない。
青切符交付の対象となる交通違反は113種類もあり、16歳以上が対象となる。主な反則金額は、●携帯電話を使いながら運転する「ながらスマホ」: 12000円、●遮断機が下りた踏切への立ち入り
: 7000円、●信号無視 : 6000円、●右側通行 : 6000円、●歩道通行（例外あり）: 6,000円、●横断歩道を横断中の歩行者などの通行を妨げる行為
: 6,000円、●傘さし運転 : 5,000円、●無灯火 : 5,000円、●並走や2人乗り : 3000円など。
簡単に処理できるからといって、違反者に次々と青切符を交付するわけではない。注意と指導が基本である。警察官の警告に従わず、違反行為を継続すれば青切符交付となる。違反行為の繰り返しは青切符交付となる。ただし交通違反により実際に事故が起きた場合や、事故に直結する悪質で危険な違反行為は即、青切符交付となる。あるいは検挙して刑事手続きに進むこともある。
歩道走行については例外が認められる。法改正案についてのパブリックコメントで最も多く意見が提出されたからである。警察庁は「自転車の通行は車道が原則」とした上で、歩道の通行が認められる条件を次のように示している。
●「歩道通行が可能」との道路標識などがある場合。
●13歳未満の児童、70歳以上の高齢者、身体に障害がある人が通行する場合。
●車道の交通量が著しく多かったり、車道の幅が狭かったりする場合。
警察官が自転車の交通違反を発見・目撃した場合、基本的には指導警告を行う。ただし、交通事故の原因となるような悪質・危険な違反であるときは検挙を行う。具体例を以下に示す。
【赤切符（刑事事件）の対象となる交通違反の例】
●酒酔い運転・酒気帯び運転
●妨害運転
●携帯電話使用等（交通の危険を生じさせた時）
●ハンドルから手を離して自転車を運転した結果、歩行者と衝突した時
【青切符の対象となる交通違反の例】
●遮断踏切立入り
●自転車制動装置(ブレーキ)不良
●携帯電話使用等（通話した時や、手に持って画面を注視した時)
●歩道を速いスピードで通行したため、歩行者を立ち止まらせた時
●信号無視で交差点に進入し、青信号で交差点に進入した車両に急ブレーキをかけさせた時
●傘を差しながら運転し、一時停止を怠った時
●警察官の指導警告に従わず、右側通行を続けた時
●取締りを行っている警察官の姿を認めながら、信号を無視した時
警察庁は25年12月11日に「交通安全教育ガイドライン」を公表した。これは自転車に特化したもので、年代別に ●未就学児、●小学校1～３年、●小学校4～6年、●中学生、●高校生、●成人、●高齢者 に分類し、事故の特徴に基づき、習得が必要な技能、知識、行動・態度をまとめている。
例えば、成人では、〝目標〟として、「高校生までに習得する交通ルール、他者とのコミュニケーション能力、危険予測と回避能力、歩行者優先といった事項が確実に身に付き、実践できるか確認し、不十分な点を補う。」「他の模範となる行動を実践し、こどもに対して交通ルールを教えることができるようになる。」としている。
成人の〝交通事故実態等〟として、「飲酒運転事故が多い。」「同乗者ありの自転車事故は増加傾向にあり、中でも30代・40代の割合が高い。(同乗者は幼児を指す)」「外国人による自転車事故は増加傾向にある」をあげている。
成人の〝教育に当たっての基本的な考え方〟として、
「これまでに習得した交通ルールを再確認するとともに、飲酒運転等の悪質な違反行為について、民事・刑事・社会的責任と関連付けて教育する。」
「理解が不十分な点については、これまでの教育内容を踏まえ、再度、教育を行う。」
「保護者に対しては、幼児同乗用自転車を運転するときの注意点を教育するとともに、自らが模範となってこどもに対する交通安全教育を行うことの重要性が理解できるよう教育する。」
「シェアリング自転車を利用する訪日外国人に対しては、自転車安全利用五則を中心に、在留外国人に対しては、一般成人と同様の交通ルールを教育する。」の4点をあげている。
成人の〝技能の教育内容 習得すべき目標〟として、
「他者とコミュニケーションを取るとともに、危険を予測し、回避して、安定した車道走行ができる運転能力を身に付ける」ことをあげている。
成人の〝知識の教育内容 習得すべき目標〟として、「自転車の交通ルールを理解している」ことをあげている。
成人の〝行動・態度の教育内容 習得すべき目標〟として、
「歩道では速度を落とし、人とぶつからない間隔を空けて、周りをよく見ながら通ることができる」
「特に高齢者や身体の不自由な人といった配慮が必要な人に対しては、安全のために十分な余裕を持って進路を譲ることができる」
「他の交通主体からの見え方を意識した上で、急ブレーキをかけさせるなどの他者に迷惑をかける危険な運転をしない」
「他の模範となる安全な運転を行うことの理解と実践」
「こどもにお手本を示す立場にあることを自覚しルールを守って安全な運転をすることができる」
「地域の交通安全啓発活動や地域におけるこどもの見守り活動に参加するなど、交通社会の一員としての責任を理解している」
「交通事故を起こしたときに刑事・民事上の責任が問われ得ることを理解し、責任意識を持って安全な運転をすることができる」ことをあげている。
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