今年8月に市議会議員選挙があったので、例年9月開催の市議会は10月に延期となった。その10月市議会で植松議員(共産党)が「旧統一教会と松原市政とのかかわりについて」質問を行った。

これは8月にマスコミ報道された「公共の看板に旧統一教会が清掃ボランティアとして認定されていた」問題である。設置場所は市役所の南約500メートルの国道309号線沿いの歩道上である。看板には“この歩道は、大阪府アドプト・ロード・プログラムにもとづき、「世界平和統一家庭連合」が清掃活動をしています。”と書かれ、その下には大阪府富田林土木事務所と松原市役所の名前が入っている。報道によると、21年9月にボランティア団体として認定され、22年4月に看板が設置されたという。

霊感商法をサポートしたことになる

 

アドプト・ロードは歩道や緑地帯などを定期的に清掃する活動である。政治家が統一教会系の集会であいさつすることが、この団体を信用させることにつながることと同様、府や市が公共の看板で清掃ボランティアとして認めることは、評価をあげることになってしまう。信用や評価を得ることで、霊感商法をやりやすくさせてしまう。

審査段階で府や市は「世界平和統一家庭連合」=旧統一教会だと気付くはずである。変更後の新組織名称を知らなくても、ネットで検索すればすぐにわかる。

松原市は毎年、消費者トラブル対策として「くらしの豆知識」という小冊子を発行し、希望する市民に配布している。22年版は177ページあり、ネットトラブルや消費者トラブル等について多くの事例が詳しく書かれている。それにもかかわらず、市民を悪質商法から守る立場の市が、逆に悪質商法に有利な環境を作り出し、サポートしたことになる。「だまされて利用された」と被害者面をすることは許されない。

近くに統一教会の施設が

マスコミの報道後に看板の文字はおおわれて見えなくなり、8月に看板は撤去された。309号線沿いにはアドプト・ロード看板が設置されているところ他にもあり、清掃は近くの企業や町会などが実施している。ということは統一教会の施設が付近にあるはずである。

実は新堂4丁目に20年以上前から存在していた。2軒の住宅が並び、そのうち1軒には「天地正教松原道場」の看板が掲げられていた。当時の住宅地図には「天地正教松原道場」の名前が書かれている。統一教会は多数の関連組織を有し、カモフラージュしている。企業、政治団体、ボランティア組織等々さまざまあるのだが、その中でも天地正教は異色である。仏教系の宗教団体である。統一教会はエホバの証人やモルモン教と並んで「キリスト教の三大異端」と称されている。聖書を模した「原理講論」という書籍を作っている。キリスト教系の統一教会の関連組織に、相容れないはずの仏教団体があるというのは驚きであり、何でもありの様相を呈している。

 

その後、天地正教は統一教会に吸収される形でなくなり、看板は外された。表向きは民家だが、活動拠点として存在し続けていたと推測される。この場所は新堂4丁目土地区画整理事業の対象地区となり、開発が進められている。2軒の統一教会施設は立ち退き対象となっていたが、他の対象家屋からはずいぶん遅れて22年夏にようやく立ち退いた。

特殊詐欺よりも悪質で巧妙

土地区画整理事業で立ち退きとなる土地所有者には、換地として付近に同等の広さの土地が提供される。早期に同意した方は既に新しい住宅を建設済みである。近い将来、統一教会施設が付近に建てられることが予想される。もし統一教会に対して解散命令が出されたとしても、宗教法人としての税優遇措置が無くなるにすぎない。オウム真理教には解散命令が出されたが、アレフなどが後継団体として活動を継続している。

1992年に歌手の桜田淳子が合同結婚式に参加したとき、マスコミは連日、統一教会批判を繰り広げた。だがそのことにより、多額の献金や霊感商法がなくなったわけではない。全国霊感商法対策弁護士連絡会の集計(1987年以降)によると、被害額は87年が約164億円と最高で、桜田が結婚した92年は約73億円、翌93年には約122億円と増えている。その後94年～2009年は20億円～50億円で推移し、10年以降は少し減ってほぼ20億円未満となっている。被害額は消費者センターと弁護士連絡会への届け出分であり、「自発的な献金」は含まれていない。マスコミに一時的にたたかれても、批判報道が収まれば再び悪質商法が息を吹き返すことが示されている。

統一教会の本体が表向き活動をやめても、多くの関連組織がカバーすることになるだろう。これまで多額献金や霊感商法で莫大な収入を得て、政治活動などに充ててきた。合同結婚式を挙げた筋金入りの信者を始め、統一教会に関わる人間は多数にのぼる。多数の組織と活動を維持するためには多額の資金が必要であり、これまで通りの悪質で違法の手段を取ることは間違いない。

特殊詐欺の場合、取り締まりが厳しくなると新しい騙しの手口を編み出してくるが、それに比して統一教会ははるかに巧妙で組織化されている。今は世間の厳しい視線が向けられているが、決して油断してマインドコントロールされてはならない。

 

アダムとイブ

旧約聖書の創世記に人類の始祖であるアダムとイブ(エバ)が登場する。蛇がイブをそそのかしてエデンの園の禁断の果実を食べさせ、アダムも食べる。これが人類堕落の原因を作った原罪であるとされるのだが、このことが日本での多額の献金集めを正当化するために使われている。朝鮮半島を植民地化した日本は“エバ国家”であり、“アダム国家”である韓国に金銭を送ることで罪の精算(統一教会用語で「蕩減=とうげん」という)を行わなければならないという。アダムも果実を口にしたので同罪なのでは? こんな荒唐無稽な話を信じてしまうところにマインドコントロールの恐ろしさがある。

罪の精算はお金だけではない。日本の女性信者が合同結婚式を挙げ韓国に渡っている。その数は7000人にのぼると言われる。結婚相手が住むのは貧しい農家が多く、彼女たちはつらい労働に耐えて異国での生活を送ってきた。それに加えて夫は信仰心がまるでない。「日本人と結婚できる」という勧誘文句に釣られて、「嫁がなかなか来ない」貧困農家の男性が入信したからである。このような逆境に置かれても決して騙されたとは思わず、神に与えられた試練だと信じてひたすら耐え抜く。マインドコントロールで精神をずたずたに破壊された結果、教えられたことを信じ込み、疑いを抱くことができなくなっているのであろう。統一教会の犯した罪はあまりにも大きい。

救済につながらない「救済法」

22年12月10日、いわゆる「被害者救済法」(法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律)が成立した。野党の主張が一定取り入れられて法案が修正されたが、審議時間は極めて短く、被害防止と救済につながるのかは大いに疑問である。

一例をあげれば、救済法は、霊感などで不安をあおり、寄付が必要不可欠だと告げて困惑させる不当な寄付の勧誘行為を禁止している。裏返して言えば、必要不可欠だと告げなければ禁止行為にあたらないことになる。被害者は長年にわたりマインドコントロールを受けた結果、指示に疑いを持たず素直に従うように精神改造されている。必要不可欠だと言わなくても寄付をさせることができる。統一教会の寄付集めの実態を無視した内容となっている。