ビラの文面(2020年７月～11月配布)
6月市議会で天美図書館、老人福祉センター弁天苑、弁天池(市有地)を徳洲会病院に売却する議案が可決された。地域医療の充実につながり歓迎すべきことだが、その手続きは例外的な措置だらけだ。①病院からの売却要望後、わずか4ヵ月弱で売買仮契約を締結。②公共財産の処分なのに一般競争入札ではなく随意契約。③稼働中の公共施設を売却し、移転が必要となる。
例外的な対応の理由を市は「早い対応をしないと病院が市外へ出ていくおそれがあった」と説明する。民間病院に過度に依存するのは、市立松原病院を廃止したことで医療サービスが低下しているからだ。
6月市議会に弁天池を売却する議案第40号が提出され可決された。市有地である天美東7丁目の弁天池を含む土地を徳洲会病院に売却するものである。池の部分だけではなく、天美図書館、老人福祉センター弁天苑のある土地を含んでいる。売却する土地は3筆の合計面積が5,196.95㎡で、建物と合わせて売却価格は395,200,000円である。
短期間の協議
合意に至るまでの期間が極めて短い。徳洲会からの売却を求める要望書を市が受け取ったのは今年(2020年)2月4日のこと。その後4月1日に徳洲会から土地の利用計画が提出され、5月14日に合意文書を作成し、5月28日に売買仮契約締結に至っている。正式な要望からわずか3ヵ月で仮契約締結というのは、コロナ対策で多忙を極めていた時期であることも考えると、驚くほどの短期間である。これまでも市有地であるため池を売却することはあったが、これほどの短期間に決定することはなく、今回は例外的といえる。(要望書、利用計画、合意文書の全文は一番最後に記します。)
一般競争入札ではなく随意契約
公共財産を売却する場合、一般競争入札を行うのが通例である。だが今回は随意契約である。公募したが応募者がなかったため、やむなく随意契約に至ったのでもない。公募することなく、いきなりの随意契約であり、このことも例外的である。市は公有財産の売却について「随意契約は違法ではなく、府都市整備部用地課の考え方に基づくもの」と答弁した。具体的には、狭小地であるため近隣の土地所有者にしか売却できない場合や、随意契約を優先すべき理由がある場合は一般競争入札を行う必要はないということで、今回は後者に該当するとのことだが、例外的なことである。
稼働中の公共施設を売却
売却の対象には天美図書館、弁天苑が含まれている。これらは閉鎖された施設ではなく、現に使われている施設である。弁天苑の年間利用者数(延べ人数)は2018年度が19,657人、2019年度が16,562人と非常に多い。(コロナ対策のため20年3月から閉館。19年度は実質11ヵ月間の数字) このように有効活用されている公共施設を売却することは例外的なことである。なお、天美図書館と弁天苑は天美東7-85に移転し、2022年12月完成予定とのことである。
受け身の姿勢
3つの例外的対応の理由について市は「徳洲会病院は市内の中核的病院であり、救急搬送の7割を引き受けている」「地域医療充実のため購入したいとの要望を受けた」「市民アンケートで医療・救急体制の充実を市民が求めていることが明らかになった」「対応が遅れると徳洲会病院が他市へ転出するおそれがあった」と説明した。
説明にあるような医療の状況を市が把握しているのであれば、なぜ市の方から積極的に市有地の提供を提案しなかったのか? 病院の要望を受けて初めて事態の深刻さに気付き、大あわてで受け身の対応をしたというのが真相であろう。アンケートの結果を知りながら、医療充実を目指す計画作成を怠ってきたのだ。
市立松原病院廃止のツケが回った
2009年に市立松原病院が廃止された後、市内の医療は主として徳洲会病院、明治橋病院、阪南中央病院に頼らざるを得なくなった。民間病院に過度に依存する状況が続いたことで、「徳洲会が市内に残ってもらわないと大変なことになる」と青ざめてしまうという情けないことになったのだ。
なお、弁天池跡地には徳洲会病院内にある介護老人保健施設「松原徳洲苑」が移転し、徳洲苑のあった個所に医療部門を拡充する予定だという。
要望書 全文
松原市長 澤井宏文様
松原市所有の弁天池跡地等の譲渡について(要望)
平素は、本院の運営に格段のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、本病院は昭和48年に松原市において徳田病院として開設し、その後、平成10年に循環器心臓病に対応する高度先進医療を中心とした高機能型の病院として、介護老人保健施設を併設し、新築移転しました。
また、市立松原病院閉院後は、市立松原病院が担ってきた小児科診療をはじめとした地域における医療機能を継承し、病床数の増床も図りながら地域医療の充実・向上に努めてきたところです。今後においても医療介護の連携強化による地域包括ケアシステムの構築等も見据えた中で、救急医療を含めたさらなる地域医療の充実及び松原市の医療と介護の拠点施設として取り組んでいくにあたり、松原市が所有している弁天池の跡地を譲渡していただきたく、下記により要望するものです。
記
1. 譲渡を希望する敷地
松原市天美東7丁目102番地、103番地、104番地
2. 敷地の活用について
(1) 地域医療及び救急医療の充実と安定的・持続的な事業運営
(2) 医療介護の連携強化を図るための施設整備
(3) 地域との交流及び松原市との連携を図るための施設運営
令和2年2月4日
医療法人徳洲会 松原徳洲会病院
理事長 鈴木 隆夫 印
敷地利用計画案
松原市長 澤井宏文様
敷地活用の計画案
要望書の敷地活用について現在検討している案を以下に示します。
現在、医療法人徳洲会が運営している以下の事業所、及び関連施設の移転先と考えています。
移転予定事業所
① 介護老人保健施設 松原徳洲苑
規模 : 入所定員 150床
通所リハビリテーション定員 60名
② 設備 : 入所リハビリ・通所リハビリ
浴室・機械浴室
レクレーション室・談話室
事務室・食堂・厨房 その他
③ 松原市地域包括支援センター
④ 松原徳洲苑介護センター(居宅介護支援事業所)
⑤ 保育施設(企業主導型向け)
規模 : 受入人数 50名
⑥ 地域交流スペース
令和2年4月1日
医療法人徳洲会
松原徳洲会病院
理事長 鈴木 隆夫 印
弁天池跡地等の譲渡に関する合意書
松原市（以下「甲」という。）と医療法人徳洲会（以下「乙」という。）は、甲が所有している弁天池跡地等（以下「本件用地」という。）の譲渡に関し、次のとおり合意書を締結する。
（目的）
第1条 この合意書は、甲と乙が双方の信頼のもと、甲が所有している本件用地を乙が有効に活用することにより、本市の地域医療体制の充実及び救急医療体制の向上、さらには医療介護の連携強化にもつながり、将来にわたって安定的かつ継続的な医療を提供することができる基盤を確立し、安心・安全な市民生活に寄与することを目的とする。
（敷地）
第2条 譲渡する本件用地については、次のとおりとする。
（1） 所在地 松原市天美東7丁目102番、103番、104番
（2） 敷地面積 5,196.95㎡
（3） 区域区分 市街化区域
（4） 用途地域 商業地域
（譲渡の条件）
第3条 譲渡にあたっての条件は次のとおりとする。
（1） 地域医療及び救急医療の充実・向上が図れること。
（2） 安定的・持続的な医療を提供するため、乙は、松原市内において今後も継続して病院事業を運営する。ただし、松原市外への移転や本件用地を売却する場合は、甲と協議し承諾を得るとともに、甲は、本件用地を第4条に定める額で買い戻す。なお、甲が特別な理由があると認める場合はこの限りでない。
（3） 妊娠から出産、子育てまでを支援する医療機能の充実に努めること。
（4） 病床の機能区分に応じた入院医療の確保に努めること。
（5） 医療と介護の連携強化に努めること。
（譲渡価格）
第4条 不動産鑑定士による適正な鑑定価格を勘案し決定した額とする。
（施設開設時期等）
第5条 乙は、新施設の開設及び医療機能の充実等については、第2条に規定する本件用地の譲渡後、4年以内に行うこと。ただし、乙の責めによらない場合はこの限りでない。
（地域貢献）
第6条 乙は、地域との交流及び甲との連携を図り、疾病予防の啓発及び地域住民の健康増進を目的とした活動を積極的に行うこと。
（支援措置）
第7条 甲は、乙が本市において中核的な役割を果たす病院として事業を継続して運営していくにあたり、医療機能の充実や医師等の確保に関して、今後も必要な支援を行うとともに、市内において移転する場合は、移転場所の確保などについても協力し、乙と連携して市民の安全・安心を守るために取り組むものとする。
（合意書の解除等）
第8条 甲または乙の一方が、本合意書の趣旨に反する重大な違反をしたときは、相手方に文書による催告のうえで、本合意書の継続を解除することができる。
2. 前項の規定による本合意書の解除または一部変更を行った場合に、甲または乙に損害が生じたときは、当該損害を与えた者は、相手方に対してその損害を補償する。この場合において、その補償額は、甲乙協議して定める。
（疑義の決定）
第9条 本合意書に定めのない事項及び本合意書に定めた事項について疑義が生じたときは、その都度、甲乙協議のうえ定めるものとする。
本合意書の締結を証するため、本書を2通作成し、甲、乙が記名押印のうえ、各自1通を保有する。
令和2年5月14日
（甲）松原市阿保一丁目1番1号
松原市
市長 澤井 宏文 印
（乙）大阪市北区梅田一丁目3番1－1200号
医療法人 徳洲会
理事長 鈴木 隆夫 印