9月市議会で下記の意見書が採択された。

性暴力救援センター・大阪SACHICOの存続と体制強化を求める意見書

性暴力救援センター・大阪SACHICOは、病院拠点型のワンストップ支援センターと して2010年度から14年間、阪南中央病院内にて24時間体制のもと性暴力被害者の支援をおこなってきました。受けてきた電話相談件数52,198件、来所のべ件数14,610件、診療及び支援した実人数3,722人に上り、大阪府下の性暴力被害者支援において中心的な役割をはたしてきました。

このように必要不可欠な機関でありながら国や大阪府からの補助金は、運営費のごく一 部でしかなく、維持費の多くを阪南中央病院が負担し、さらに不足分を寄付金等で補ってきました。医師・看護師は通常の病院の診察・看護の業務をおこないつつSACHICOでの診察に当たってきましたが、これらは善意の超過勤務で支えられていた状態です。医療現場での働き方改革もあり、一民間医療機関がすべてを負担することは困難な事態となっています。このままでは、SACHICOは2025年3月末を目処に阪南中央病院から撤退せざるを得ない状況にあり、ワンストップ支援センターが大阪府に存在しない事態になります。

また、これまで大阪SACHICOは､被害者の安心のために支援員が常に寄り添ってサポートすることを大切にしてきましたが、現状では支援員と医療者によるサポート体制を確保し続けることも困難になっています。緊急避妊薬の投与、証拠物の採取、医師による外傷の記録など､72時間以内に診察をおこなうことは必要不可欠な条件です。また、年齢、性別問わず被害者になり得ることから、産婦人科だけでなく、精神科、小児科、外科、整形外科、泌尿器科、麻酔科等の総合的に診療が可能な医療機関であることが望ましいといわれています。

よって、以下の２項目について緊急に要請する。
１、2025（令和7）年3月末をもって阪南中央病院から退去を求められている性暴力救援センター・大阪SACHICOの活動拠点を大阪府の責任において速やかに確保し、運営にかかる費用を保障すること。
２、公的病院を拠点とするワンストップ支援センターを設置すること。公的病院外に設置する場合においては、産婦人科、精神科、小児科、外科、整形外科、泌尿器科、麻酔科等の ある医療機関との連携を強化し、早期の治療が可能になるよう、体制を樹立すること。さらに、すべての医療機関との連携を強め、体制強化すること。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年10月4日

松　原　市　議　会

同様の意見書が堺市、高槻市、枚方市、交野市、羽曳野市、河内長野市、吹田市、貝塚市、箕面市の議会で議決されている。また9月25日の福祉文教委員会で、森田議員(日本共産党)が「SACHICO存続への支援」について質問を行った。

9月27日、大阪府議会代表質問で自由民主党大阪府議会議員団がSACHICOの問題を取り上げている。以下、「大阪府議会だより№212」から引用します。

Q: 府における性犯罪・性暴力被害者のワンストップ支援センターに位置づけられている、性暴力救援センター・大阪SACHICOが活動拠点から令和7年3月末までの退去を求められていると聞いており、もはや待ったなしの状況。性犯罪被害者の唯一の拠り所であるセンターに対する認識と、この状況を踏まえて、機能維持をどのように図っていくのか伺う。

A: 性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を踏みにじる犯罪行為であり、絶対にあってはならない卑劣な行為。ワンストップ支援センターは、こうした被害直後の傷ついた性犯罪被害者を支援する上で極めて重要な存在。府としては、SACHICOと協議しながら、今年度できるだけ早期に移転先を確保し、性犯罪被害者を支えるワンストップ支援センター機能がしっかりと継続できる体制を構築し、協力医療機関等の適切な支援につなげていく。

SACHICO　とは

SACHICO(サチコ)は女性の名前ではなく、Sexual Assault Crisis Healing Intervention Center Osaka（性暴力危機治療的介入センター大阪）の略称です。2010年に相談から診療、警察との連携等を担う全国初のワンストップ支援センターとして設立され、松原市の阪南中央病院(民間病院)を拠点に24時間対応を行ってきた。被害直後の初期対応や相談、医師の診療への付き添い、警察、弁護士や精神科医との連携を行う。同病院の医師・看護師は業務の合間にSACHICOでの診察にあたってきた。

開設以来2022年度まで利用者は増加傾向で、2010年度の相談件数（延べ）は1463件、診療人数は128人だったが、2022年度には相談件数4231件、診療人数406人に増えた。SACHICOはワンストップ支援センターのモデルのように考えられてきた。

ワンストップ支援センターは各都道府県に少なくとも1カ所設置され、現在、全国に52カ所ある。このうちSACHICOのような「病院拠点型」は12カ所と少なく、「相談センター中心連携型」が37カ所である。政府は「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」で、「ワンストップ支援センターを中核とする被害者支援の充実」をあげている。そして、病院へのワンストップ支援センター設置を進めるとし、「公立病院や公的病院への設置や提携」に言及している。

活動存続の危機

利用者は増加傾向であったが、22年度の診療人数406人に比して、23年度は121人しか診察できなかった。その原因は何か。
運営費への公的支援が不十分であり、病院を拠点とするワンストップ支援センターでは、医師・看護師の支援行為に補助金が出ず、経費は病院が負担している。ワンストップ支援センターは利益を生む事業ではなく、経営状態に左右される民間病院では活動に限界がある。

診療は阪南中央病院の医師らが業務の合間に対応してきたが、働き方改革により医師の残業規制が強化される。阪南中央病院も経営面の事情などから24年度末までに事務所の退去を求めている。

府議会への請願署名

この危機的な状況を打開しようと「性暴力救援センター・大阪SACHICOの存続と発展を願う会」が結成され、大阪府議会への請願署名に取り組んできた。請願内容は、
1．2025（令和 7）年 3 月末をもって阪南中央病院から退去を求められている性暴力救援センター・大阪 SACHICO の活動拠点を大阪府の責任において速やかに確保し、運営にかかる費用を保障してください。
2．公的な病院を拠点とするワンストップ支援センターを設置してください。
である。

12月4日、「大阪SACHICOの存続と発展を願う会」は府議会への請願署名48,463筆を提出した。12月16日、府議会はこの請願を不採択とした。

その後25年2月、府は大阪市住吉区にある府の保健福祉施設「こころの健康総合センター」にSACHICOを移転する案を決定した。だがこの決定はワンストップ支援センターを求める請願を拒否した上のものである。SACHICOの精神が受け継がれていくのか、しっかりと見守っていく必要があるだろう。